CHEF’S Sensitivity

Ristorante Miyamoto:
宮本けんしん
MIYAMORO KENSHIN

宮本シェフは、2011年農水省料理人顕彰制度「料理マスターズ」を最年少で入賞。「熊本を食の大地、熊本にしたい。」という想いから、熊本の生産者と料理人をつなぐアルチザンクラブの活動に成就。地域のお手伝い、料理人と生産者をつなぐ活動を10年以上行っています。熊本阿蘇を世界農業遺産にする取り組みを第一線で行い、その石杖を築いた宮本シェフ。阿蘇のあか牛など世界的な食材に導いたその経験から、地域食材に対する想いを聞きました。

地元食材への意識の始まりは 「食材、職人を守るのは、レストランの役目」という言葉から。

地域の食材に対する意識のきっかけは、イタリアに住んでいた時からです。当時、料理を教えてくれた師匠が、地元の食材を多く使っていました。イタリアは郷土料理の集合体という意識が強い国です。とは言え、2つ星のレストランで、世界中からお客さんが集まるのに、「どうしてそこまで地元食材にこだわるのか?」という質問をしました。師匠は、「生産者や食材、職人を守るのはレストランの役割」と答えました。その言葉が未だに残っています。希少な食材や技術を守ることができるのは、レンストラン。食材の魅力を引き出すことも、食材の価値を伝えていくことも料理人の役目だと感じています。食材を大切にすることは、当たり前のことであるし、地元で料理をするのであれば、地元の魅力をもっと深いものにしたいと思っています。

「美味しいの、もう一つ先は何だろう。」ということを追求する。

あか牛と黒毛和牛は、肉質が違います。どちらも優れた肉で、調理の仕方によって変わります。味や性質で言えば、それぞれに特徴があるし、美味しい肉です。しかし食材の見方としては、美味しさばかりではなく、その日本の牛をどう守っていくか。ということも大切だと考えます。私は、固有種を残していきたいという想いで料理を通じて、活動しています。柔らかいとか、脂がのっているとか、美味しさの基準は色々あると思いますが、美味しさばかりに重点が行き過ぎると利用価値がなくなった時に、どんどん衰退していきます。大切な食材の価値をどこで感じてもらうか。そのきっかけの一つが、レストランだと思っています。

「地元だから、地元のものばかり」ということではない。
料理人なので、まずは自分が美味しいと思うもの。
自分が好きなもの。魅力的だと思う食材を使うことが根底にあります。

熊本に帰ってきて、10年以上前から、地元食材と料理人をつなぐ活動をしていたので、私のことを「地産地消を早くから広めた人」という紹介をされることもありますが、自分の中では、地産地消の意識は、あまりありません。「その地域のものばかりを使えばいいか」といえば、そればかりではありません。レストランなので、自分が美味しいと思うものが優先だし、好き嫌いは出ます。根底として、最低限大切なのは、自分が魅力的だと感じる食材をお店で使うことです。

熊本阿蘇は世界農業遺産。熊本の凝縮した魅力とは?

熊本阿蘇を世界農業遺産にする取り組みも、偶然にも自分が良いと思える生産者が周りにたくさんいたからです。それは、熊本が様々な環境に恵まれた日本有数の食の大国であることを意味します。広大な自然を持つ阿蘇は、あか牛や馬肉、高原野菜や乳製品などが作れる大農業エリアです。天草方面の不知火海は、いろんな柑橘が育つ温暖な気候と環境に恵まれ、球磨川流域一帯は希少な里山風景が残る地域です。荒尾市や宇土市に面する有明海は、満潮と干潮の潮位の差が日本一で、エツやマジャク(穴ジャコ)などこの海ならではの魚介が存在します。このように、様々な地理的条件が重なり、1年中農産物に恵まれ、いろんな生態系、食材が凝縮した環境にあるのが、熊本の大きな魅力です。この素晴らしい故郷に生まれたことを誇りに思い、「もっと熊本の食の魅力を知って欲しい。」という想いが、世界農業遺産への取り組みを大きくしていった原動力だと思っています。地元の人は、当たり前すぎて、地元食材の魅力を感じていないこともあります。だからこそ、別の視点や考えが大切になってくると感じています。今は、情報がすぐに行き来できるから、地元食材に対する意識を変えられる環境にあるので、もっと熊本の食材の魅力を様々なカタチで発信して欲しいと思っています。

CHEF'S PROFILE

リストランテ ミヤモト:オーナーシェフ 宮本けんしん

熊本県山鹿市出身。19歳でイタリアへ。
・ウンブリア州フォリーニョ市当時1つ星レストラン「ヴィッラ・ロンカッリ」、
・トスカーナ州キャンティ地区チェルバイアイタリアを代表する2つ星の名店「ラ・テンダ・ロッサ」に入店。
憧れの料理人だった巨匠マリア・サルクーニ女史のもとで全てのセクションを経験後、シェフ・パティシエを務める。
・トレンティーノ・アルト・アディジェ州、標高1800m、バディア渓谷にある1つ星レストラン「ラ・シリオラ」に入店。「イタリアで最も敬愛する料理人」であるコラード・ファゾラート氏のもとで学び、シェフ・パティシエ、プリモのシェフを務める。
・リグーリア州「イル・ガッビアーノ」にてシェフ。

(主な受賞歴)
・2011年 第2回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」
・2012年 第52回 熊本県農業コンクール大会「農業貢献賞」
・2012年 熊本日日新聞社創立70周年記念懸賞論文「熊本グランドデザイン」において、自身の論文「100年後の未来に繋がる食の大地・熊本構想」が優秀賞受賞。

(公職)
・2011年 農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」
・くまもと「食の大地」親善大使
・「阿蘇地域世界農業遺産推進協会」顧問など

公式ホームページ http://forzakenken0609.wixsite.com/ristorantemiyamoto

熊本県 天草ぶり、荒尾なしを使用

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