食材の価値で料理の美味しさを決めるのではなく、
料理で食材の魅力を感じることができるかどうかを大切にしています。
スーパーで安く売られているチコ鯛を使います。チコ鯛は身の質が柔らかく、マリネにするとねっとりした食感になります。チコ鯛を選んだ理由は、安いからではなく、食べて美味しかったことと、今回の料理のイメージに合うということが前提です。チコ鯛はレストランではあまり出てこない食材です。おそらく、価格が安すぎてお店では、使いにくいということもあると思いますが、その食材の価値は価格ではなく、料理としてどう生かせるかだと思っています。魚は、もともと海にいる時は同じ価値なのに、海から出ると変わってしまいます。食材を守ることも考えて、料理に応じて工夫しながら、食の魅力を伝えることができないかと思っています。
チコ鯛は身の質が柔らかく、ねっとりした食感
チコ鯛をバーナーで炙ります。今回は素材にお茶の葉を使用するので、お茶の風味と合わせるために、焼きの香ばしさをプラスしています。
コンセプトは、価値のないものに価値を見出す。料理名は、その名もDEGARASHI。
この料理には八女茶本玉露を使用しています。料理と一緒に出すお茶の、使い終わったお茶の葉を捨てずに、料理に使うというコンセプトです。今回使用する八女茶本玉露は、まさに出汁です。飲めば分かりますが、「お茶ってこんなにも旨味が出るのか。」という衝撃を受けました。この八女茶本玉露は、一般的なお茶とは全く異なる味わいと深みがあります。
だからこそ、作ることができる料理でもあります。
お客様に最初の一杯で出す玉露のお茶の出がらし。
お茶の葉と和風だしのジュレを合わせてチコ鯛の上に敷き詰めます。
彩りを考えて、緑の大根を花びらのように飾りつけます。
旨味が詰まった八女茶本玉露。料理をいただく前にまずは、お茶本来の美味しさを感じてから。
シェフの思考が息づいた鮮やかな逸品。
マリネした炙りチコ鯛、出がらし、緑大根を重ねたものに黒胡椒、とんぶり、セロリ、花を散らし、焼きナスとシソのオイルを添えた鮮やかな創作メニュー。
上に振っている黒いものは焼きナスの皮を乾燥させて粉末にしたもの。捨てるものにも価値をつけたいと考えるシェフの想いが詰まっています。
吉武シェフが使用した「八女茶本玉露」
福岡市中央区赤坂の名店、「万yorozu」徳淵氏が厳選した八女茶本玉露を使用。お茶の美味しい飲み方を知り尽くした匠と吉武シェフの感性が一つの料理として表現されています。